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SOKA GAKUEN BOOKLET

VOL.1 -Calligraphy-


社会において「STEAM」教育の重要性がフォーカスされる中で、子どもたちの人格形成における「Art(芸術)」の役割の重要性に関心が集まっている。
今回は創価学園においての情操教育の大きな柱の1つである「書道」の取り組みを紹介する。

 

「iPad」×「書道」


机には筆と硯と半紙、そしてiPad。
創価高校では、通常では見かけない書道の授業の風景がある。

授業の流れや、文字の特徴、作品の時代背景などを説明した15分程度の動画を教員が作成。その動画をiPadで見た後、生徒は筆を持って書き始めるが、お手本もiPad。
書道の世界とデジタルテクノロジーが融合した空間が広がっている。

従来の書道の授業は、大勢の生徒たちの前で1人の教員が文字を書いて見せ、練習していくという授業が一般的だが、教員がどのような筆使いで書いたかは、生徒は一度しか見ることはできない。

これに対し、ICTを活用し動画にすることで、生徒は教員が書いている様子を近くで、しかも何度も確認して学ぶことができる。
iPadによって、あたかも1人の教員が1人の生徒に個別指導しているような環境がつくられ、教員は授業内で個別に、より本質的なアドバイスをすることができる。

 

「名品」に触れる


書道の授業では、ただ単に筆の使い方を学ぶだけではない。
その文字が生まれた時代背景を学んでこそ、広々とした書道の世界の扉が開かれていく。

例えば楷書。楷書が完成したと言われているのは西暦700年代の唐時代。当時は、戦乱の時代を終えて、中国全土が統一の方向に進んだ時代であった。
この平和な時代に残された楷書は、今までにない美しい書体として、現代に受け継がれている。
今も残る「名品」には、その書体に当時の時代背景が投影され、作者の思いが凝縮している。

生徒は様々な書道の「名品」に触れ、学び、向き合う中で、作品に込められた心に思いを馳せる。
その心に触れることのできた感動を、自分の言葉として語ることができる人に、そして、その繰り返しの中で「芸術を愛する心」を培ってほしいとの思いが書道の授業には脈打っている。

 

考える、感じる、心が動く


お手本を見て、何となく真似て文字を書くことは誰にでもできる。しかし、それだけでは情操教育としての価値は少ない。
生徒たちは書き方を分析して実践する。また、その中で考えたことを文章化する。
生徒がじっくり「考える」時間を、授業では大切にしている。

さらに、書道の「名品」をより身近に、そしてビジュアルとしてイメージすることができるよう、オリジナルの書道史の漫画も作成。作品の時代背景に迫ることができるように工夫がちりばめられている。

生徒は千数百年間の時空を超えて、当時の世相の中で生きた作者の心をリアルに想像し、文化的空間の中で文字に込められた思いを考える。

考えて、想像して、筆を執る―――

その過程で自分が感じた様々な思いを筆に託す時、表現して伝えることの難しさ、そして、その先にある豊かな感動を味わうことができる。

 

芸術は「平和の武器」
(創価高等学校 書道科教諭 平井友章)


書道を通じて芸術を学ぶということは、上手い字が書ける人を育てるというだけでは決してないと思っています。
芸術作品の一つ一つには、作者の思想や伝えたい思いが込められています。その思いが見る人の心に波及し、そこから人々の交流が生まれていく。そこに芸術の偉大さがあると感じています。
そして、その芸術の力で人と人をつなぎ、平和を実現する道を開いてこられたのが、創立者だと思います。

創立者は、幼き頃、戦争をご自身で体験され、戦争を生み出した人々の奥底にある生命を直視してこられました。平和の尊さを誰よりも思うからこそ、その実現のために、心の交流を生み出す芸術を「平和の武器」と位置づけて行動されてきました。

書道を通し、芸術の持つ偉大な力を肌で感じ、多くの人と心をつなぐことができる人を育てたい。その思いで、創価の平和芸術教育を創っていきたいと考えています。

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